11月11日は介護の日。
ご自身の介護経験をモチーフにした小説を出版された、
阿川佐和子さん特別インタビューを掲載中!
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3年半にわたる入院生活を送った父・阿川弘之氏を2015年に看取り、現在は認知症のお母様を介護している阿川佐和子さん。ご自身の介護体験をモチーフにした小説『ことことこーこ』(角川書店)が9月に出版されました。
作中にも散りばめられている、明るくユーモラスな阿川流・介護のススメや、日本の介護現場の問題点、施設や病院を選ぶポイントなどについて伺います。

 

 

『ことことこーこ 』は、バツイチになって実家に戻ったアラフォーの主人公・香子が、認知症が現れ始めた母・琴子の介護と仕事の両立に奮闘する物語である。

 

まず、介護をテーマにした小説を執筆しようと思われたきっかけを教えてください。

 

阿川 日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が年々増加している状況に伴って、ここ10年くらいの間に小説も映画も、介護問題や高齢者問題をテーマとしたものが、どんどん出てきています。でも、そのほとんどは内容が辛い・暗い・重い。「なんか、もうちょっと明るい介護小説は書けないかな」と思いまして。実際に私の母を見ていると、見事に明るく呆けているんですよ(笑)。会う度に毎回おかしいことが発生するので、こういうエピソードを物語に組み込むことができたらと。

 

たしかに、胸が締め付けられるような辛い場面などは全然なくて。ほっこりするような、清々しいような読後感に包まれる介護小説です。

 

阿川 もう一つ。介護される人の気持ちを、私たちがもっと理解できないかという思いがありました。私が出演しているテレビ番組で、老人の徘徊問題を取り上げた際、ある専門家が「徘徊する側にも理由があるんです」と、おっしゃった。徘徊老人は、家を出るときにはちゃんと目的を持っています。「郵便局に行かなきゃ」とか。ところが、そこから先の手続きが若い頃のようにうまくいかないから、混乱してしまう。そういったことを分かってもらいたくて、琴子が徘徊をする章は本人の語り口調で書きました。なので、その部分は私のまったくの空想、創作です。

 

お母様は現在ご実家で生活されているのですか?

 

阿川 平日は住み込みで母のケアをしてくれるご夫婦がいて、とても助かっています。それ以外に、私と兄弟たちは毎月シフトを組んで、交代で母の世話をしています。あとは定期的に母を病院に連れて行くのも、私の担当です。

 

お仕事と介護の兼ね合いで苦労されたことはありましたか?

 

阿川 誤嚥性肺炎を起こした父を高齢者向けの病院に入院させることになり、認知症が始まっていた母の世話はどうするかとなったとき。当時は兄弟の中で私だけが独身でしたから、仕事を半分くらいに減らそうかとか、母と同居しようかとか思ったりもしました。そのころ、介護の経験が豊富な友達から、思いも寄らない助言をされたんです。「アガワ、この1、2年頑張ろうと思っているでしょ? それ甘いから」って。「親が1、2年でコロッといってくれるとは限らないのよ。10年、いや下手すると20年、介護が続くかもしれない。だから力み過ぎず、手を抜きなさい。自分だけが犠牲になるなんてことを考えないの」。それは本当に目から鱗でしたね。

 

一人で何もかも抱え込もうとしないことが大事なんですね。

 

阿川 それと女性が介護に関わり始める時期って、ちょうど更年期と重なるんですよ。自分の体調がパニクっている上に、介護までやらなきゃいけないんだから、それはもうおかしくなる要素満載。うつ病になる人もいます。そういった、同時期にボンボコ飛んでくるあらゆる試練をどう処理していくかを考えたときに、どこかで気を抜いたり、ズルしたりするところを見つけないと、絶対に続かないことに気づきました。

 

実際にどんなズルを?

 

阿川 父はとにかく口うるさい人で、こっちが仕事中でも電話してくるし、病室に行けば、これやれ、あれはまだか、どうしてお前はそうなんだと怒られる。とうとう頭にきて、父の口座から引き落とされるデパートの家族カードで、自分の下着とタイツを買ってやって、スカッとしたこととか(笑)。

 

本当はゴルフに行ってたんだけど、仕事帰りのふりして「疲れちゃった〜」って母に言ったら、「あんた忙しいのねえ? 横になってなさい」と、気遣われちゃって。なんか悪いことしたなって、まるで浮気した亭主の気持ち(笑)。隠し事とかしている旦那さんは、奥さんに優しくなるでしょう。私も今度、母が何回同じことを言っても、イライラせずに聞いてあげようと思えたんです。私はそれを“後ろめたさのススメ”と言っています。じゃないと、人に優しくなんてなれないんだから。これは良い手だと思っております。

 

介護する側の受け止め方によって、気持ちも楽になれるんですね。

 

阿川 物忘れが進んでいくことを悲しいとか、情けないとか思ってたってきりがない。「呆けてる」というのは、見方によっては「ボケてる」ってことだから。母と私の日々のやり取りなんて、まさに漫才。ボケとツッコミですよ(笑)。この間、夜中1時間おきにお手洗いに行くのに付き添ってたんです。さすがにくたびれてとろんとしてたら、私のお尻を指でツンツンして「寝てる〜」って(笑)。病院に行く日の朝、母をせかしながらお化粧している私を見て、「ふふん、綺麗よ」なんて言ったり。笑わせてくれるでしょ? ふざけてるんじゃないよって(笑)。

 

2025年には高齢者の人口が総人口の3割を超えると予測されている日本社会において、今後求められる介護の形とは。

 

 

現在の日本の介護現場には、どんな問題点があると思われますか?

 

阿川 男女雇用機会均等法の制定から30年以上経った今でも「家事、育児、介護は女性がする方がいい」という認識を持っている人が、男女を問わず多い気がします。たしかに、女性は目の前のことをどうやって片付けていくかという作業が得意で、男性は長期的展望から全体の解決策に向かって進むことを得意とする動物ではあるのですが。私も介護を始めてから「やっぱり、親は娘に見てもらうのが一番幸せなんだよ」と随分いろんな人に言われました。でも、ちょっと待ってください。男性もやることがあるんじゃないの? まず、そこの意識改革は必要です。

 

また、今の高齢化社会は医療を重視して長生きさせるという考え方が支えています。でも、父がお世話になった病院は入院中でも飲酒も外食も問題ナシ。「やりたいことはどんどんやりなさい。何かあったら私たちが手を差し伸べますから」という考え方でした。長く生きている中で一番大事なことは、今までしてきた暮らしを継続すること。そこにこそ長生きしている意味が出てくるのです。これからの高齢化社会のシステム作りには、医療よりも生活を優先した病院や施設の役割が大きくなっていくと思います。

 

では、良い施設や病院の選び方を教えていただけますか?

 

阿川 110歳になる伯母が入居している老人ホームを探すときに、私もいろいろ見て回りました。大切なのは、家やマンションと同じように何カ所も見学してみること。そして、そこで仕事をしているスタッフの様子をよく見ること。これは『看る力』(文春新書)で対談した大塚宣夫先生(医療社団法人慶成会)に教えていただいた方法ですけどね。

 

 

【プロフィール】
あがわ・さわこ 
1953 年東京都生まれ。報道キャスターを経て、小説家やエッセイストとして活躍。『聞く力―心をひらく35のヒント』(文春新書)、『看る力 アガワ流介護入門』(同)、『強父論』(文藝春秋)など著書多数。
『TVタックル』(テレビ朝日系)、『サワコの朝』(TBS系)では司会を務め、昨年は日曜ドラマ『陸王』(TBS系)で連ドラ女優デビューも果たした。

 

 

 

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